ネックレス事件②サプライズと縛り

そして3年後の今年。

 

先日久しぶりに会った。

今回も1年くらい間があいている。

 

スロプロの仕事は年中休みがない。

遠洋漁業に出てるとでも思ってほしい』と言われたことがある。

 

しかし今回アイツは『会うためだけに』『仕事を休んで』『1日時間を作って』来た。とても珍しい。

 

嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

室内で私は、半年以上前に渡したかった誕生日プレゼントを渡した。

『渡す機会が無かったから』

と言って差し出そうとすると

 

アイツはバッグの元へ行き、中からゴソゴソと紙袋を取り出して

 

『高いものじゃないけど、今しか買えないかもしれないから』

 

とだけ言ってその紙袋を私に渡してくれた。

 

 

開けてみると

3年前、喧嘩の発端になったゴールド色のネックレスだった。

 

 

『覚えていてくれたんだ』

 

 

絶句とはまさにこのことだ。

 

涙が出た。

 

嬉し涙って本当に出るんだな、と思った。

 

こんなサプライズが存在するのかと心底驚いた。

 

紆余曲折を経て今の職はスロプロ。公には所得ゼロ。普段から損得勘定体質でお金にはシビアだ。なのに。

 

 

嬉しかった。

まさかこんな日がくるなんて。

夢見心地だった。

 

『もう…仕方ないからさ(笑)』

 

アイツは笑った。

 

 

 

 

 

 

後日。

 

冷静になってゆっくり思いを巡らせてみると

 

昔の私の話が縛りにでもなったのだろうか、と思った。

 

アスペルガーの特性のせいで『頼まれたからにはいつか買わなければならない』という縛りに。

叶えなくてはならない、と。

それがずっと気になっていたのて単に実現したまでにすぎなかったのだろうか。

 

ネックレスを買ってくれた意図は聞いていない。

 

単純に

私への愛情のしるし

と受け取めていいものなのか。

 

いや

そんな自信はない。

 

  

 

夢を見ているような嬉しい気持ちでいっぱいだったが

 

日が経つほどに苦しくなっていったのも事実だった。